AV界の巨匠、代々木忠監督吠える「性表現は荒廃の一途を辿っている」

「ドキュメント ザ・オナニー」「素人発情地帯」「ザ・面接」など数々のヒット作品を手掛け現在も第一線で活躍しているAV界の巨匠、代々木忠監督が、エロスな事件簿にAVに対する思いを語った。(この記事は2010年にエロスな事件簿に掲載されたものです)

代々木忠
――代々木監督は40年近くアダルト作品を撮っているのですね?
 ピンク映画の時代、その頃から撮っていました。だから、自然の流れでアダルトビデオも撮るようになったのです。35ミリで日活ロマンポルノなどの劇場用映画を撮る一方で、ビデオ作品も16ミリで撮影していた。当時はビデオカメラを今のように個人で使う時代ではなかったですから。1980年代に入ってからですね、みんながビデオカメラで撮る時代になってくるのは。1981年にアテナ映像を立ち上げたのですが、その10年前から性をテーマにした作品を撮っていたわけです。

――昔と比べるとどんなところが変わりましたか?
昔は、本番はまずなかったですから、当時から見れば今は考えられない時代です。女優さんは演技の積み重ねによって本物に近づく、あるいは本物を超えようとした。しかし、スクリーンの女優たちはビデオには出なかったですから、ビデオを撮るために女の子を街でスカウトしたりしてね。でも、小遣いが欲しくて出る娘だから演技の質は低いわけです。そういう娘たちを被写体にして、お客をどう満足させるか、何が表現できるのかということになってきますよね。勢い本番やっちゃおう、本気のオナニーを見せてと、そういう方向に行かざるをえなかったですね。
ですから、初期のフィルムの時代とはまったく立ち位置が違ってきたわけです。後にアダルトビデオが市民権を得て、テレビに出ても十分通用しそうな娘もビデオに出るようになってくるわけですね。ビデオにそういう娘たちが出るようになるまでには、長い時間がかかったわけです。

――ビニ本業界からの転身も多かった。
ピンク映画からモーテルやホテル向けのビデオになり、やがて家電向けのアダルトビデオに変わってきたというのが一番根っこでしょ。ここが主流になって、一方でビニ本の規制が厳しかったので、ビニ本業界からも参入してきた。そういった人たちは映画とはまったく違うアプローチでアダルトビデオを作っていくわけです。映画畑の連中は、性をどう表現するのか、人間の性はどうあるべきなのか、それぞれテーマをもって描いていった。その中で優れた作品も出た。一方で新しい業界だからいろんな人たちが参入してきた。金儲けのためにアダルトビデオ業界に参入する人たちも多かった。

――業界の現状をどう見ていますか?
初期の頃のような作品は出なくなってしまったね。尻の穴を見せれば売れる、ヘアーを解禁すれば売れる、商売のためにアダルトビデオを作る人たちが非常に力をもってきた。だから、一方で性表現は荒廃の一途をたどっていますよ。性は内面ですよね。内面から形ができてくる。でも、金儲けの手段として投資している人たちにとっては、性は手段ですよね。だから、抜けるビデオをどう作ればいいのか、それが主流になってきたし、内面よりもヘアーを見せれば売れるということに流れていった。かつては性を描きたくて、探りたくて作品を作った。そういう作品には力があった。その時代から比べると、ものすごい質の劣化が今、起きていると思う。

――売れる作品を作ることばかりにとらわれすぎている?
売れる物を大量に生産して売っていく、それは世の常だと思うんですよ。しかし、ピンク映画はそうして衰退していった。アダルトビデオも同じ道をたどっていると思います。僕なんか監督として自分の好きな物を撮っていますから幸せなんですが、今、主流になっているのは監督不在なんです。メーカーがマニュアルを作っている。ジャンルごとにマニュアルがあって、その通りに撮る現場監督がいればいいいという。だからほとんどが監督不在です。今のアダルトビデオには人間の情緒や心はほとんど描かれていないですよね。本来、そこを描かなければいけないのに抜け落ちている。ピンク映画も激しい濡れ場を見せればお客が入ると思って、濡れ場ばかりの作品をどんどん作って衰退していった。今、それと同じことがアダルトビデオにも起きている。

――そうした現状の中で監督はどんな作品を撮っているのですか?
この間、撮ったのは「ようこそアブナイ世界」というシリーズです。いろいろ問題を抱えた女性と向き合って性の喜びを知ってもらおうという作品です。今回は、20本くらいアダルトビデオに出演してきた娘です。彼女は幼児期からの問題があって人間不信というか、そういう事情があって性の喜びが得られないわけです。20本もビデオをやっているのに痛いわけですよ。ヒリヒリして濡れないし。

――ドキュメンタリー的な作品ですね。
今回の作品作りのテーマとして、僕が掲げたのは少しでも人を好きになってもらうということ。そして、セックスってこんなに気持ちいいんだよということを彼女がつかんでくれればいいなぁと思って撮りました。そのサポートをしていくのが男優であり、ほかに感性が豊かな女の子にも登場してもらって、で、過去にトラウマをもった女の子が何をつかみ、どんなエンディングを見せてくれるのかという作品ですね。

――監督がこれから撮りたい作品はどんなものでしょうか?
時代、時代に出てくる女の子と向き合った時に、その時代を反映した作品になっていくと思うのですね。だから、僕はどういう作品を撮りたいとかあまり考えないし、そういう企画力もないのです。出会った時に、そこでいろんなものがひらめく。そこからドラマが生まれてくる。まず、出会いありきということです。だから、同じ狙いで撮っても人によってその人を育んだ社会背景がそれぞれ違うわけですから、違う作品になりますよね。その時に出会った人と向き合っていけば、その時代の女性のあり様とか、性意識とかいろんなものが覗けますよね。記録に残すこともできる。だから、できるだけこちらの意図を入れないようにありのままというか、その時々の作品を撮っていくでしょう。

代々木忠】1938年福岡県生まれ。1972年「ある少女の手記・快感」で監督デビュー。1981年にピンク映画からAV界へ転身しアテナ映像を設立。同年「愛染恭子の淫欲のうずき」を、ビデオ撮り初作品として発売する。「サイコ催眠エクスタシー」、「いんらんパフォーマンス」、「ザ・面接」、近年では「女が淫らになるテープ」など、話題作を多数発売。演技を超えた真実の性を求め、素人を起用することにこだわる姿勢と、心の奥底まで写し取るドキュメンタリー手法でSEXの新しい可能性を切り開いてきた。